桜守公園― 神戸市東灘区岡本 ―
東灘区岡本に「桜守公園」がある。この地は一生を桜の保護と品種改良に捧げた笹部新太郎氏の旧宅を神戸市が買い上げて公園にしたものである。

笹部新太郎氏は東京帝大法学部を卒業しながら、就職の道を選ばず、父祖伝来の私財を投入して日本伝来の山桜、里桜の育成にカを注いだ人である。大阪造幣局 の通り抜けの桜、近江舞子の湖岸桜並木、橿原神宮の桜並木など氏が育成した桜の名所は数多い。氏はまた宝塚市武田尾に自ら演習林と名づけた苗園を設け、そ こで日本古来の山桜、里桜の苗木を何万本と育成し、それらを惜しげも無く全国各地に分与した。

笹部氏の業績の一つとして忘れてはならないのが、荘川桜の移植である。樹齢450年の見事なアズマザクラの巨樹が、ダムの湖底に沈むのに心を傷めた関係者 の熱意に同感した笹部氏は、見事前代未聞の巨樹の大移植作業を成功させた。この話はNHKの番組プロジェクトXでも放映されたので、見た人も多いに違いない。

この事業に感動して筆をとったのは水上勉氏で、昭和42年に小説「桜守」を書いた。ある日、「岡本の私邸に新種の桜が根付いたので見に来ませんか」との笹 部氏の誘いを受けて、水上氏が訪れたことがある。その時「この木が大きくなって家が邪魔になるようだったら、木を残して家を壊すように言い残しておきます よ」と笹部氏は語ったという。そして遺言どおり家は取り壊されて桜守公園となり、桜の老樹とそれを取り巻くササベザクラの幼樹が可憐な花を咲かせている。
文:廣川 幾雄
| 関連サイト | 岡本散策・桜守公園(2003年3月) |
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