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神戸の地ソース探訪




神戸の“食”と言えば、洋食・ケーキ・中華料理などのイメージが強いのですが、実は、お好み焼きには欠かせない「ソース」作りが盛んな“まち”でもあるのです。
そこで、神戸のまちと地元の人の暮らしとの観点から“地元で製造されるソース(神戸の地ソース)”に着目しました。

神戸のソース名人に聞く!“神戸と地ソースの結びつき”
神戸のこんなソースあんなソース探訪


神戸のソース名人に聞く!“神戸と地ソースの結びつき”

神戸には固有のお好み焼き文化があるという。2002年に出版された「神戸とお好み焼き-まちづくりと比較都市論の視点から-」によると、神戸のお好み焼きの特徴は3つ。
1.『名称-お好み焼きのことを神戸の五十歳以上の世代は“にくてん”と呼ぶ』
2.『焼き方-キャベツと小麦粉を混ぜて焼く(大阪はこちらが主流)のではなく、粉をクレープ状に流し、その上にキャベツをのせる店が多い』
3.『味(ソース)-全国的に流通するソースではなく、地元のメーカーのソース(地ソース)が使われ、店主も客もこだわりのソースを持っている人が少なくない』とある。実は、神戸市内には7社のソースメーカーがあり、これは都市の人口規模からみれば高い集積度にある。※「神戸とお好み焼き-まちづくりと比較都市論の視点から-」から引用。
このように、神戸で生まれ、食文化が根付いてきた、神戸の“地ソース”について、「神戸とお好み焼き-まちづくりと比較都市論の視点から-」の著者である、武庫川女子大学助教授の三宅正弘氏に話を伺った。

 

 

神戸とお好み焼き
<神戸とお好み焼き-まちづくりと比較都市論の視点から->

著者:三宅正弘/編集:のじぎく文庫/発行所:神戸新聞総合出版センター

Q1.神戸にはなぜ多くのソースメーカーがあるのでしょうか。

「推測になりますが、洋食文化と共にソースが発展したのではないでしょうか。神戸の人々の生活と外国文化の距離が近く、外国の食材も受け入れやすかったのでしょう。もともとお好み焼きには、醤油をつけて食べていましたが、ソースも合うことがわかり、広まったのだと思います。」

 

Q2.神戸の“地ソース”に共通する味の特徴はありますか。

「メーカーによって味はすべて異なりますが、神戸のソースは比較的スパイシーだと思います。甘みの強いとんかつ・お好み焼きソースでも香辛料の香りがしっかりしているものが多いです。味の好みや感じ方は人によって異なりますが。」

三宅正弘氏 「神戸とお好み焼き」著者/武庫川女子大学助教授 三宅正弘氏
 

Q3.その理由をどのようにお考えですか。

「こちらも推測ですが、神戸には古くからソースを作り、なおかつ、大半のメーカーがソースを専業としています。このようなメーカーの多くは、ウスターソースの製造から始めています。とんかつ・お好み焼きソースに比べ、香辛料の効いた、酸味のあるウスターソース作りを経験して、とんかつ・お好み焼きソースの製造を始めているので、スパイシーなとんかつ・お好み焼きソースが多いのはないでしょうか。その味が、神戸のソースの味として受け継がれているのではないかと思います。」

 

Q4.神戸の人が持つ、“地ソース”に対してこだわりとはどのようなものなのでしょうか。

「お好み焼き屋さんがひしめきあう、兵庫区と長田区ではソースが喧嘩のネタになるというエピソードがあるほど、こだわりを持っている方もいるそうです。
“あそこのが、一番おいしい”とか、“子供の頃に食べた味が忘れられない”という風に、地元のものであり、昔から馴れ親しんだ味であることにこだわりがあるようです。」

神戸のソースメーカー分布図

神戸のソースメーカー分布図

 

Q5.神戸の“地ソース”は今後どのように展開していくとお考えですか。

「地ソースメーカーの多くは、大大的な宣伝をすることもなく、地元の味として暮らしの中で受け継がれて行きました。様々な事情で工場を閉鎖することになっても、近くにある別の工場で銘柄ソースの製造を引き継いだりするケースもあれば、きっぱり辞めてしまう場合もあります。どちらも自然の流れであると思います。ブームに惑わされることなく、自然に無理なく続いていけばいいと思っていますし、そうなるのではないかと考えています。世代が変わっても、昔から食べているソースの味が基準になり、それが一番おいしく感じるもの。地元で個性あるソースを作り続け、地元のお好み焼き屋さんでそのソースを味わうことで、地ソースはまちに残っていくと思っています。」※本記事は「神戸とお好み焼き-まちづくりと比較都市論の視点から-」を参考。

 

三宅正弘氏
将来お好み焼き屋さんを営むのが夢だと語る三宅氏。そのお店に掛ける、出来たばかりのオリジナル暖簾を前ににっこり。

 

<三宅正弘氏プロフィール>
1969年芦屋市生まれ/工学博士/武庫川女子大学 生活環境学科 助教授
都心から郊外、山村漁村と西日本を中心に、各地のまちづくりや空間デザインを手がけ、「ケーキ」「お好み焼き」「弁当箱(遊山箱)」などの身近な題材から、まちづくりや地域デザインを提唱する。

 



「神戸のこんなソースあんなソース探訪」

森彌食品/ブラザーソース・お好みとんかつソース

 

神戸市内でも特にお好み焼き屋が多く点在する兵庫区に、工場を構える森彌食品。創業者である先代が、戦後日本の食生活は西洋化の一途をたどると考え、昭和25年にウスターソースの製造を開始。近所の図書館などの文献から独学でソース作りを学び、試行錯誤を繰り返して現在の味を生み出した。阪神・淡路大震災により工場が全壊し、一時は廃業も決意したが、「もう一度、ここのソースを食べたい」という、得意先や地元の人々の声によって、製造を再開した。

できたてのソースをねかせる熟成タンク

できたてのソースをねかせる熟成タンク

ブラザーソース

左から“お好み・とんかつソース”、“ウスターソース”、”どろからソース”

ここの売れ筋商品は、“ブラザーソース お好みとんかつソース”。やさしい甘さの中にしっかりとスパイスが効いていて、香り高い味わいだ。「香辛料は粉末状に加工されたものを仕入れるのではなく、独自で原材料を粉末状にして使用しています。」と、代表取締役の森垣氏は、深い香りの秘密を話す。香辛料を粉末にするのは、高い技術を要するとのこと。味に妥協を許さず、研究と努力を重ねたことで生まれた“ブラザーソース”は、子供の頃食べたのが忘れられず、大人になって探しにくる人や、外国からの一時帰国の際にソースを買いに来るファンもいるそうだ。

<森彌食品/ブラザーソース>
TEL:078-575-9334/URL:http://brothersauce.com/

 

 

阪神ソース/敬七郎

 

医者であった創業者の安井敬七郎氏が日本人に合うソースを作る為に研究を重ね、さらには、イギリスにある世界最古のソースメーカー「リー&ペリン」社を訪ね、ソース作り学んだ。そして、明治29年に兵庫区に「安井舎蜜工業所」を構えたのが、日本では最も古いソース業者の一つである阪神ソースの前身である。ちなみに“舎蜜(セイミ)”とは“化学”の意で、当時ソースは、研究対象として位置づけされていたことが伺える。

敬七郎・創業当時の写真

阪神ソースの前身である、創業当時の“安井舎蜜工業所”の様子

敬七郎 ウスターソース

明治時代のレシピをベースに作られた“敬七郎ウスターソース”

現在の阪神ソースの銘柄商品は、創業者の名前をつけた“敬七郎 ウスターソース”。明治時代に作られていたレシピをベースに、現代人に合う味へ改良したものだが、原料は当時とほとんど変わらず、さらには食品添加物等を一切使用していないという。「ソースは、酸(醸造酢)、塩分、糖分のバランスが大切で、その3つがうまく合えば、おしいく、長持ちするソースができます」と4代目である現代表取締役の安井氏は語る。ほどよい酸味と香辛料の香りが上品な味わいの“敬七郎”は、ソース本体の価格よりも送料の方が高いにもかかわらず、日本各地から注文が届くそうだ。甘みの強いとんかつ・お好み焼きソースが主流の現在、日本のソースの原型とも言えるすっきりとしたこの味に、懐かしさを覚える人も少なくないだろう。

<阪神ソース/敬七郎・日ノ出ソース>
TEL:078-453-1111/URL:http://www.hanshinsauce.jp/

 

 

平山食品/プリンセスソース

 

阪急王子公園駅から西へ数分、高架下の一角に「プリンセスソース 業務用・家庭用・小売りいたします」の看板が目立つ。入り口付近からは甘くてスパイシーなソース独特の香りが漂う、こちらが、親子二代でプリンセスソースを製造する平山食品。決して広いとは言えない工場内に、ソースを作る大きな釜や熟成タンク、出荷用の一升瓶が所狭しに並んでいる風景が、地元に密着し、長年マイペースに製造を続けてきた様子が伺える。

プリンセスソース 工場

高架下に工場を構える

 

とんかつプリンセスソース

個人の常連客の中には、一升瓶で買い求める方もいるという。

機械らしいものがほとんど見当たらないのも、一つ一つ手作業でソースを作り続けている証だろう。ここ王子に工場を構えたので、“プリンスソース”と命名する予定が、先に使用されていたので、“プリンセスソース”に落ちついたそうだ。当時は、現在よりもお好み焼きが身近な料理として親しまれていたが、どの店もソースへのこだわりは薄かったという。「自転車に瓶詰めしたソースを乗せて、売りに行っても、買ってくれるような時代でした。今ならありえませんよね。」と息子の平山さんは語る。味は、玉ねぎ、にんにく、香辛料などの素材の風味がしっかりしており、付け合わせのキャベツの千切りや野菜炒めにも相性がよさそうだ。「こちらのソースを長年愛用してくださる方の為にも、味を出来るだけ変えずにいきたいと思っています。」と変わらぬ味を約束してくれた。

<平山食品/プリンセスソース>
TEL:078-861-4050