
はじめに
坂本龍馬と勝海舟。
この二人の人物が日本史上で果たした役割はよく知られるが、神戸との結びつきはあまり知られていない。
しかし、特に龍馬が神戸で活動していた時期は、彼にとって大きな転機となった時期であり、それゆえに龍馬の神戸にかける想いは大きいものであった。
龍馬と勝、この二人が神戸に残した足跡を辿ってみたい。
◆ 龍馬と勝の出会い
文久2(1862)年、龍馬は上士・下士という身分格差のある土佐藩を脱藩し、勝の門人となった。
勝は幕臣でありながら、勤皇の志士とも思えるような行動をとるなど、当時の幕府にあっては非常に先進的な考えの持ち主だったようである。
◆ 神戸海軍操練所の開設
勝は14代将軍徳川家茂や小笠原長行、岩倉具視、三条実美、坂本龍馬と共に摩耶山に登り、神戸の海岸を眺望して我が国の開国や神戸港の開港を談義した。
そこで勝は家茂に大阪湾防備の必要性と海軍設立を説き、この考えが認められた。
和田岬などに砲台を設置し海防を強化しようとしていた幕府とは違い、勝は機動力のある海軍と人材を育てることが重要と考えていた。
勝は海軍操練所の開設と人材育成を進言、大阪から神戸まで海岸警備状況を視察した結果、海軍操練所の開設地は神戸に白羽の矢が立った。
文久3年3月(1863年4月)に家茂はこれを聞き入れている。
それは攘夷決行の日が文久3年5月10日(1863年6月25日)とされたころである。

勝は海軍操練所の開設を進言する一方、幕臣として沿岸警備のための砲台築造に携わった。
和田岬・川崎(湊川)・西宮・今津の各所に、勝の設計による砲台が建設された。
工事を請け負ったのは、幕府廻船方御用達・嘉納治郎(講道館柔道の創設者、嘉納治五郎の父)であった。
現在、湊川・今津の砲台は取り壊され、西宮の砲台も内部が消失し、石郭のみとなっているため、和田岬砲台のみが当時の面影を残している。
(和田岬砲台は三菱重工神戸造船所敷地内にあるが、改修中のため2013年3月まで見学することができない。)
海軍操練所は龍馬も情熱を注ぎ、元治元年5月(1864年7月)に開設にこぎ着けたが、元治元年10月(1864年11月)には、勝は江戸に召還され軍艦奉行を罷免された。
池田屋事件は元治元年6月5日(1864年7月8日)に起こっている。
そして翌年の慶応元(1865)年には海軍操練所も閉鎖された。

-
1864(元治元)年、海軍操練所が開設され、諸藩から練習生を募集する。
龍馬も姉に宛てた手紙で、「神戸に訓練所を創ります。弟子も各地から400~500人集まります」と誇らしげに述べている。
実際、幕臣や各藩からかなりの人数が集まったようで、その中から200人ほどを選別し、神戸海軍操練所はスタート。
(その他の塾生として、後に外務大臣として活躍した陸奥宗光、初代連合艦隊司令長官を務める伊東祐亭など。)

-
海軍操練所は敷地の総面積が約1万7千坪、構内には船入れ場やポンプ場も設けられた大規模なものだった。
現在では、この海軍操練所の跡地に「海軍操練所跡碑」が建てられており、神戸市立博物館には「神戸海軍操練所の鬼瓦」が展示されている。

-
また、近くには海軍操練所に関わった勝海舟、坂本龍馬、陸奥宗光をたたえる「海軍操練所顕彰碑」も建てられている。
(左側の碑はレプリカ。オリジナルは諏訪山公園に設置されている。)
◆ 勝の私塾を神戸に開設
勝は、海軍操練所開設までの間門下生に海軍の知識を教えるため、大阪に私塾を開いたが、文久3年9月(1863年11月)に神戸に移転した。
三宮神社の近くである。この私塾は100~200人規模で、塾生には、海軍操練所の訓練生となるべく集まった諸藩の若者の中から特に志のある者が選抜された。
文久3年(1863年)10月に龍馬はこの塾頭になっている。
龍馬は勝のとりなしで脱藩の罪が許される事になり、海軍操練所開設のため、資金調達など精力的に活動した。
この頃、龍馬が実家に宛てた手紙で、「神戸で海軍の創設に打ち込みたいから、家督については姪に婿を取るようはからってほしい」と懇請している。
この手紙からも、龍馬の神戸海軍操練所にかける情熱を感じることができる。
◆ 龍馬行きつけの場所
勝塾の塾頭時代、龍馬29歳のころであったが、仲間を引き連れて遊びにも行ったようである。
海軍操練所の書生寮のすぐ近く、現在では大丸神戸店の北東にあたる場所に、「三宮神社」がある。
この神社のすぐ横に、当時「三茂」という小料理屋があった。
龍馬はここで仲間とよく酒を酌み交わしていたらしい。

勝塾開設には、神戸村の庄屋で豪商の生島四郎の尽力もあったが、平野祇園神社の近くに生島四郎の別邸があり、そこに勝は仮住まいしていた。
龍馬もそこを何度も訪ね、密談もしていたようである。

また、湊川神社や舞子砲台にも訪れていたようで、湊川では次のような歌を残している。
湊川にて詠んだ歌
湊川神社は楠木正成を祭った神社で、神戸では「楠公さん」と呼ばれて親しまれている。龍馬が生きた時代、正成が後醍醐天皇に忠誠を尽した話は、正成と同じく天皇中心の政治を志した勤王志士たちの注目を集めていた。
多くの勤王志士たちが正成の墓碑を訪れ、天皇への忠節を誓ったと言われている。
龍馬も海軍操練所から徒歩で30分程のこの神社を訪れたようで、「湊川にて」と題したこの和歌を詠んだ。
月と日の むかしをしのぶ 湊川 流れて清き 菊の下水
湊川にいると、日月の紋章がはためいていた時代がしのばれる。
月日はながれても菊水の故事のごとく常しえに清い楠木正成の忠誠心よ。
正成生きた当時、日月紋が天皇家の紋として使用されていた。
年月・歳月・光陰を意味すると同時に、日月の紋章をもつ官軍の象徴「錦の御旗」を暗示する。
菊水。
我が国古典でも長命や長寿をもたらす延命水を意味すると共に、楠木家の家紋を暗示する。
後醍醐天皇から菊紋の使用をゆるされた楠木正成は、そのままでは畏れおおいとして菊水紋を用いた。
神戸を流れる名所歌枕。明治の埋め立てにより現在の流路は往時とは異なる。
湊川で詠んだ歌のほかにも、龍馬は明石を訪ねた時に「明石にて」と題した歌を残している。
明石にて詠んだ歌
この歌を詠むと、疲れて意気消沈した龍馬が思い浮かばれるのだが、おそらく慶応元年の前半頃に詠われたものではないだろうか。前年の元治元年、より所としていた神戸海軍操練所が閉鎖され、志が閉ざされた後、5月頃には体調をくずしてしばらく療養する期間があった。
またその後の薩長同盟周旋活動も、順調には進まなかった。仕事も体調もスランプの時期だったのである。
うき事を 独明しの 旅(枕) 磯うつ浪も あわれとぞ聞
やりきれない思い抱え、ひとりで居明かす明石の旅の夜。
磯にうちかかる波すら、「哀れ」としか聞こえず落ち込むばかりである。
旧明石郡(明石藩)。現在の明石市(二見地区を除く)と神戸市垂水区・西区・須磨区(北須磨地区)が該当
その後
慶応3年10月14日(1867年11月9日)大政奉還、慶応3年12月7日(1868年1月1日)には神戸開港となり、海軍操練所跡地の運上所で開港式典が行われた。
監修:神戸市生涯学習市民講師
神戸歴史クラブ理事長
豊田 實
◆ 神戸・坂本龍馬ゆかりの地
今回の特集で紹介した史跡・スポットの情報はこちらです。
| 公式HP | http://www.mhi.co.jp/kobe/introduction/wadamisaki/ |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県神戸市兵庫区和田崎町1-1-1 三菱重工神戸造船所内 |
| お問合せ先 | 078-672-2224(神戸造船所総務課広報チーム) ※現在、改修中のため2013年(平成25年)3月末まで見学できません。 |
| 周辺地図 | より大きな地図で 神戸情報館(神戸特集:神戸と龍馬) を表示 |
| 所在地 | 兵庫県神戸市中央区新港町17 (海岸通り京橋交差点NTTドコモ神戸ビル前) |
|---|---|
| 周辺地図 | より大きな地図で 神戸情報館(神戸特集:神戸と龍馬) を表示 |
| 所在地 | 兵庫県神戸市中央区波止場町1-4 (神戸水上警察署西側の公園内) |
|---|---|
| 周辺地図 | より大きな地図で 神戸情報館(神戸特集:神戸と龍馬) を表示 |
| 公式HP | http://www.city.kobe.lg.jp/culture/culture/institution/museum/main.html |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県神戸市中央区京町24 |
| 開館時間 | 午前10:00~午後5:00(入館は午後4:30まで) ※毎週金曜日は午前10:00~午後7:00(入館は午後6:30まで) |
| 休館日 | 公式HPを御覧下さい。 |
| お問合せ先 | 078-391-0035 |
| 周辺地図 | より大きな地図で 神戸情報館(神戸特集:神戸と龍馬) を表示 |
| 所在地 | 兵庫県神戸市兵庫区五宮町26 ※個人所有のため内部の見学はできません。 |
|---|---|
| 周辺地図 | より大きな地図で 神戸情報館(神戸特集:神戸と龍馬) を表示 |
| 公式HP | http://minatogawajinja.or.jp/index2.html |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県神戸市中央区多聞通3-1-1 |
| 開館時間 | 神社境内は24時間開放されています。 |
| 休館日 | 無し。(宝物殿のみ木曜日が休みです。) |
| お問合せ先 | 078-371-0001 |
| 周辺地図 |
より大きな地図で 神戸情報館(神戸特集:神戸と龍馬) を表示 |



























