
「湊川隧道(みなとがわずいどう)」。この名前を聞きなれない方も多いかもしれませんが、
その正体は、“モダンでおしゃれなまち神戸”の地に100年以上前につくられた巨大な“地下空間”。
神戸の歴史を語る上では欠かせない場所のひとつ「湊川隧道」とは、いったいどんなところなのでしょう!?
約100年前、人の力で「湊川隧道」は誕生しました。
湊川隧道の生い立ち

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湊川隧道(別名:会下山トンネル)は、神戸市兵庫区に位置する標高85mの会下山(えげやま)を貫く、今から108年前の1901年(明治34年)に築造された日本初の近代河川トンネル。
創設時の湊川隧道の延長は約600m、断面から見ると馬蹄形で内空の幅7.3m、高さ7.7mあり、当時としては、世界最大級の規模を有するトンネルでした。
「湊川隧道」が出来る前、湊川(旧湊川)は石井川と天王谷川合流地点から現在の湊川公園や新開地を通り、神戸のまちを東西に分断するように神戸港へと流れていました。天井川であった旧湊川は、普段は水量も少なく穏やかな川でしたが、ひとたび大雨が降ると、六甲山の水と土砂が周辺の地域へ氾濫し、大きな被害をもたらす危険な川でした。さらに、高さ6mにも達する川の堤防によって神戸が二分され交通の便が悪いこと、押し流された土砂で神戸港が埋まってしまうことが問題に。【上記写真】 上:呑口側坑門工建設の様子/下:創設当時の吐口側坑門工

- そこで問題解決のため持ち上がったのが、旧湊川の付替え計画です。会下山にトンネルを掘り、そこに川を通して苅藻川に合流させるというこの大計画は、地元の小曽根喜一郎や豪商・藤田伝三郎や大倉喜八郎などが発起人となり「湊川改修株式会社」を設立し、この計画を実行。設計には日本を代表する土木技術者・瀧川釖二がかかわり、施工は現在の大成建設(株)である大倉組が行いました。
【左記写真】 上:付替え前の湊川(旧湊川)/下:付替え後の湊川(新湊川)
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現在のような工事用の機械や車両は無い時代、その施工はツルハシやノミ等を使い手掘りで行われたそう。

- また「湊川隧道」の内壁はレンガで覆われ、側壁はイギリス積み、天井などのアーチ部分は長手積み、天井の一部に堅積みなど様々な手法が用いられており、トンネルの底(インバート部)には切り出した花崗岩が敷き詰められています。その数はなんと、レンガ約450万個、花崗岩約3万個にものぼるそう!このレンガのひとつひとつを手作業で積みトンネルを形成した工員たち・・・
当時の技術者・工員をはじめ、その偉業は計り知れません。
こうして誕生した「湊川隧道」建設を含む旧湊川の付替え工事は、「烏原貯水池」、「兵庫運河」とともに、神戸における明治期の三大土木事業といわれています。そして旧湊川の跡地に出来たのが、神戸の中心が三宮に移る前に最も栄えた繁華街湊川・新開地です。
【上記写真】 壁面上部が「長手積み」、下部が「イギリス積み」。
天井部は「堅積み」という特殊な方法が用いられている。
新たなトンネルの誕生、近代土木遺産としての価値

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流れを替えた湊川(新湊川)の水を約100年間流し続けてきた「湊川隧道」ですが、1995年(平成7年)に起きた阪神淡路大震災により、吐口坑門の崩壊や一部のレンガが剥がれ落ちるなどの被害にあい、補修工事が行われました。
その後、新湊川の災害復旧助成事業により「新湊川トンネル」の建設が決定。「湊川隧道」の北側に内空の幅12.8m、高さ10.2mのより大きなトンネルを建設することとなり、2000年(平成12年)に「新湊川トンネル」が完成・通水を開始しました。
「新湊川トンネル」に役目のバトンを渡した「湊川隧道」は、その歴史的・技術的評価を学者・民間・行政から成る「会下山トンネル保存検討委員会」のもと検討され、近代土木遺産としての価値が高いことから先人の偉業を後世へ伝えるために保存が決定しました。【上記写真】「新湊川トンネル」の呑口坑門工。旧坑門工のデザインを復元している。
後に保存検討委員会のメンバーの呼びかけで、一般市民も参加する「湊川隧道保存友の会」を結成。現在に至るまで、講演会や見学会、「湊川隧道」の魅力を活かしたイベントなどを開催し、その保存と活用に向けた取り組みが行われています。
■参考: <湊川隧道保存友の会、兵庫県神戸県民局県土整備部神戸土木事務所 発行/パンフレット『湊川隧道』><兵庫県神戸県民局県土整備部神戸土木事務所 発行/パンフレット『新湊川トンネル』>
■協力:兵庫県神戸県民局神戸土木事務所
| 公式HP | http://web.pref.hyogo.jp/ko05/ko05_1_000000027.html | 備考 |
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時空をつなぐ!?空間、その保存と新たな役割
ここに魅せられた私たちで守る伝える -湊川隧道保存友の会-

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「湊川隧道保存友の会」は、保存検討委員会のメンバーであった神吉和夫氏を会長(元会長)とし、2001年(平成13年)に組織されました。主な活動内容は「湊川隧道」内部の定期的な一般公開や講演会の開催をはじめ、隧道内で音楽コンサートなどのイベント、年に1度の会報の発行などをボランティアで行い、地元の河川愛護団体や商店街とも連携し、地域の方が「湊川隧道」をより身近な存在として感じることを目指しています。
同会には地域住民を中心に正会員約60名、賛助会員約40名、法人会員8社が参加し、活動を行っています。中には土木関係の専門家もいっらしゃるそうです。【左記写真】 イベントの準備をする「湊川隧道保存友の会」の会員のみなさん

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「湊川隧道保存友の会」の現会長である吾妻義信さんも「湊川隧道」の近くに住むひとり。昔から身近な存在であった「湊川隧道」に愛着を持ち、市民活動の一環として参加されたそうです。
「“地域の宝物は地域の人の手で守る”という思いで活動しています。この活動を通して地域の活性化やまちや住人同士の“きずな”づくりにつながればと考えています。土木専門家・地域住人・行政など、それぞれの目線で知識や知恵を出し、協力し合いながら隧道を守り、広め、さらには地域をPRしたいです。」と、吾妻さんは「湊川隧道」、そして地元に対する想いをお話くださいました。こうした活動が評価され「湊川隧道保存友の会」は、2009年(平成21年)3月に、地域の魅力や個性を活かした優れた地域活動に贈る国土交通大臣表彰「手づくり郷土(ふるさと)賞」を受賞されました。
【上記写真】 「手づくり郷土(ふるさと)賞」受賞の認定証とパネル
幻想的な空間、新感覚な世界

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「湊川隧道保存友の会」によって毎月1回(1、2月を除く)定期的に行われている、隧道内部の一般公開とミニ音楽コンサートに行ってきました。
記者は数年前に「湊川隧道」の存在を知り、一度はぜひ足を運んでみたいと常々思っていたので、まだ見ぬその姿に期待を膨らませ、いざ隧道の入り口へ!
【左記写真】 役目を終えた後に新設された入り口付近のコンクリート斜路部。現在は「湊川隧道」の関連資料やパネルを展示。

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隧道の入り口付近はコンクリート作りとなっていて、その80m先にある当時のまま(※一部補強)の湊川隧道(※保存区間)へつながっています。 訪れた日は真夏のような暑さで、熱気の中を隧道内部へと続くコンクリート部の傾斜をくだっていくと、その先の暗闇の中にぼんやりとレンガ造りの壁が見えてきます。
先へ進み、ついにレンガ造りの大空間に一歩足を踏み入れたとたん、肌に触れるひんやりと冷たい空気に驚きました。まるで真夏日に外から、扉を開けてしっかりと冷えた室内に入ったような感覚です。もちろんコンクリート部とレンガ部の間に壁などありません。
案内をしてくださった会長の吾妻さんのお話によると、隧道内のレンガ部の気温は約18℃。これはトンネル外部の気温に関係なく、年中ほぼ同じ温度なのだそうです。【上記写真】 「湊川隧道」レンガ部。現在、トンネルの途中までは歩きやすいよう木製舗装が施されている。

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「湊川隧道」の内部は予想以上に大きく、長く、その存在感に圧倒されました。薄暗い空間をぼんやりと照らす灯り、レンガの壁に所々付いた大きな染みやひび、天井からぽたぽたと垂れる水とその音・・・・・もともと人が立ち入る為に作られた空間ではありませんが、構造物としての美しさと、どこか怪しげで緊張すら感じさせる雰囲気は、訪れた人を惹きつける魅力に溢れています。
さらにこの目の前に広がる空間を形成している無数のレンガや花崗岩は、人の手によってひとつひとつ積み上げられたものであることに、先人たちへの敬意の念が涌きあがります。音楽コンサートは、トンネルの真ん中辺りで行われます。取材時に演奏されていたのは、ボランティアで活動されているフォークグループ“ぽぽむ”さん。演奏前に隧道内で演奏することについて質問すると、「このような空間で演奏するのは初めてのことなので緊張していますが、とてもわくわくしています。」とおっしゃられていました。
【上記写真】 トンネルを形成するレンガや花崗岩は人の手によって積み上げられたもの。

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「湊川隧道」の幻想的な空間の中、ほぼ満席となった客席を前にいよいよ演奏会スタート。2人の女性ヴォーカルの歌声、フォークギターの奏でるメロディー、心地よい男性コーラスにより力強く温かなハーモニーを生み出す“ぽぽむ”さんの演奏がトンネル内で反響し、何とも不思議な音となって客席に届きます。
音楽ホールやライブハウスでは聞くことのできない響き・・・演奏者の背後でしっとりと輝く赤茶色の壁と出口の見えない大きな穴・・・もうその場は、神戸・日本であることを忘れてしまうような、さらには遠い時空へタイムスリップしたかのような感覚に感動を覚えました。【左記写真】 幻想的な空間の中行われるミニコンサートは、格別な時間に。

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現在、このような催しや活動が「湊川隧道保存友の会」を中心に行われ、地域のシンボルとして、人々の交流の場や神戸の歴史を発信する場としての新たな役割を担い始めた「湊川隧道」。さらにその存在価値を高め、新たな歴史を刻んでゆくのは神戸で暮らす私たちの役目なのかもしれません。
【左記写真】 ほとんど創設当時の姿のままのレンガ部奥。
■協力:湊川隧道保存友の会
<取材後記>
期待以上の空間と体験に記者もすっかり「湊川隧道」の虜に。再度訪れることを心に決めています。
取材時に、現地で案内をされていた保存会の会員さんは、もともと兵庫県でお勤めされ「新湊川トンネル」の建設に携わっていたそうですが、その際に「湊川隧道」の魅力に惹かれ、保存友の会に入会したそうです。
お話によるとレンガの積み方は主に「長手積み」や「イギリス積み」が用いられていますが、一部「堅積み」が混じっているそう。どうしてもその箇所を見たかったので探してみましたが、記者は見つけることができませんでした。
「湊川隧道」に訪れた際は、ぜひ探してみてはいかがでしょう。
| ・公式HP | http://www2.kobe-u.ac.jp/~midori/minatogawazuidou.html |
|---|---|
| ・一般公開&ミニコンサート |
神戸市兵庫区湊川町 |
| 公開日 | 2009年/8月15日、8月22日、9月19日、10月17日、11月21日、12月19日、2010年/3月22日 ※ 8/22以外はいずれも第3土曜日 |
| 時間 | 公開時間 13:00~16:00/ミニコンサート 13:30~、14:30~ |
| お問い合わせ先 | TEL:078-803-6064 (事務局/担当:市成) |
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