
国際都市・神戸のアイコンである「異人館」。建物を観光で楽しむのはもちろん、市内では今も、歴史ある洋館が様々な形で利用されているのをご存知ですか? 今月はそんな現役の異人館にスポットをあて、神戸に息づく西洋文化の魅力をご紹介します。
旧グッゲンハイム邸 (垂水区/ 塩屋町)
神戸・三ノ宮方面から垂水へ向かう途中、海沿いの線路から山手に目を向けると、緑の中にたたずむ洋館が見えます。神戸の外国人たちが別荘地として愛してき た塩屋で、100年の町並みを見守ってきた『旧グッゲンハイム邸』。地元の原風景の中にあり続けてきたこの建物は今、震災や取り壊しの危機を乗り越えて、 新たな一歩を踏み出しています。
旧グッゲンハイム邸の歴史

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「旧グッゲンハイム邸」が建てられたのは1909年(明治42年)。ドイツ系の貿易商であるグッゲンハイム一家が住居として建造したもので、北野の異人館などでも知られるアレクサンダー・ネルソン・ハンセルの設計と言われています。グッゲンハイム家は1915年(大正4年)までこの邸に暮らし、その後は様々な所有者の手をわたってきました。
ここ十数年は民間企業の寮として大切に利用されてきましたが、震災と度重なる台風に見舞われ手放されることになり、取り壊しの危機にさらされました。建物が朽ちていく姿に胸を痛めていた地元のステンドグラス作家 デュルト・森本康代さん一家が、2007年に私財を投げ打っての購入を決意。個人の所有物ではなく地元の資産として残していこうと、イベントなどに利用できる多目的スペースとして運用されています。
【写真】 旧グッゲンハイム邸の玄関。プロの手を借りつつ、オーナーや別館の入居者さんが建物の修繕に取り組んでいます。
「異人館」から、枠にとらわれないアートスペースへ

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「僕は、大反対しかしてなかったんです」 とお話してくれたのは、旧グッゲンハイム邸の共同オーナーであり、建物の管理に携わる 森本アリさん。家族の共同名義で買い取りを決めた時は、歴史ある建物を背負うことに抵抗があったといいます。
貸しスペースを始めた当初は、建物の保全を喜ぶ建築士会の方や、チャリティーでの利用、友人の結婚式がほとんどでした。ミュージシャンでもある森本さん が、「やるなら自分たちが楽しいように」と運用を続けるうち、アートスペースのイメージが自然と定着しました。
それからは、ネットや雑誌で旧グッゲンハイム邸を知った人々が集まるようになり…コンサート、ヨガ、ピラーティス、自力整体教室、結婚パーティー、カタログやコスプレの写真撮影から落語会まで、今では利用目的もバラエティ豊かです。
【写真】 一階にあるイベント用スペース。床やシャンデリアなどは、ほぼ当時のまま残されているそうです。
ふたたび鼓動を始めた、建物の息吹

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裏手にある長屋風の別館は、個室単位で賃貸されています。ここも数人に声をかけたところ、すぐに入居者が集まったそう。日々建物の修繕を手がける森本さんの姿を見て、入居者の方も部屋や共有スペースを自分たちで改装するようになりました。
多様な手作り感のある別館には、貸し館にとどまらずコミュニティー的な存在になりつつある旧グッゲンハイム邸の姿がうかがえます。資金の確保や運用 方法など多くの困難があるなか、歴史的な建物をどう守っていくのか。この場所は、今後のモデルケースになっていくのかもしれません。
自然と人の集まる場所… 旧グッゲンハイム邸には、思わず住みたくなるような不思議な魅力があります。人が暮らし、愛される場所として甦った建物の息吹が、私たちを惹きつけているのかもしれません。
【写真】 塩屋の海を望む二階廊下。アーチ型の開放的な窓に、異人館らしさを感じます。
| 公式HP | http://www.nedogu.com/ |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県神戸市垂水区塩屋町3-5-17 |
| 営業時間 | 9:00~22:00 |
| 休業日 | 不定休 |
| お問い合わせ先 | TEL:078-220-3924 |
| 備考 | 毎月第3木曜日/13:00~16:00 無料見学会開催 |
神戸北野サッスーン邸 (中央区/ 北野町)
神戸に暮らす外国人たちの住宅地として、明治初期から多くの洋風家屋が建築された北野。海を望む洋館は「異人館」の名で親しまれ、神戸を代表する観光スポットとして人気を集めています。そんな北野の一角にたたずむ 『神戸北野サッスーン邸』 は、今もウェディング会場として利用することのできる歴史ある異人館です。
旧サッスーン邸の歴史

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「サッスーン邸」の名前は、1985年までこの建物に暮らしていたデイヴィッド・サッスーン氏に由来します。1937年に来日したサッスーン氏は、 日本人の勤勉さや温かさに感銘を受け、1991年に亡くなるまでの生涯を日本で過ごしました。彼はまた、神戸に設立した会社で貿易・不動産業を営みなが ら、社会福祉に力を注いだ慈善家でもあります。
北野にある異人館の中でも歴史の長いサッスーン邸ですが、阪神・淡路大震災では煙突が陥没するなどのダメージを受けました。修繕された建物は一般公開されていましたが、2002年より 『神戸北野サッスーン邸』 としてオープン。神戸に現存する異人館でウェディングができる貴重な式場として、多くの人に喜びを届けています。
【写真】 緑に囲まれたサッスーン邸の玄関。二階サンルームには自然光があふれています。
建物の持ち味と調和する式場に

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建物の外観や造りには手を加えず、内装の補修なども当初の姿をほぼ残す形で行われました。館内の調度品や什器は、異人館らしいサッスーン邸の持ち味を生か して取り揃えたもの。お客さまの中には建築好きな方も多く、異人館の雰囲気に合った衣装やメイク、お花、お料理などを工夫され、個性的なウェディングをさ れるもいらっしゃるそうです。
広い庭に面した邸宅には自然光があふれ、たくさんの窓から心やすらぐ緑の景色を楽が楽しめます。 神戸市指定の伝統的建造物なため、バリアフリーなど、お客さまのための改装ができないといった苦労もあります。スタッフの方たちは、そんな面も歴史ある サッスーン邸の持ち味であると考え、利用される方のご理解をいただきながら式場を運営されているそうです。
【写真】 5部屋ある待合室のひとつ。当時の生活感がしのばれる温かみがあります。
喜びを歴史ともに見守る、あたたかい異人館

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本物の邸宅として使用されていた建物には、通常のホテルや式場にはない「わが家」のような温かみがあります。挙式で一日を過ごすと、新郎・新婦もすっかりサッスーン邸のオーナーになった気分。「帰りたくない !」と思われるお客さまも多く、毎年記念日にこの場所を訪れ、思い出の部屋で記念撮影をされる方もいらっしゃるそうです。
時が流れてもここにあり続ける安心感、また戻ってきたくなる“スウィートホーム”であることが、サッスーン邸の魅力なのかもしれません。サッスーン氏がも ち続けた「人」に対する温かさは、今もこの場所に生きています。『神戸北野サッスーン邸』は、これからも新しい世代の歴史を刻みながら、人々の喜びを見 守ってくれることでしょう。
【写真】 デザートタイムは、庭でのブッフェ形式が人気。ペットも家族の一員として参加できます。
| 公式HP | http://www.kitano-sassoon.jp/ |
|---|---|
| 所在地 | 神戸市中央区北野2-16-1 |
| 営業時間 | 11:00~19:00 (カフェ営業もあり。事前にお問い合わせ下さい) |
| 休業日 | 水曜日 |
| お問い合わせ先 | TEL:078-251-4111 |
東遊園地・ヴィラブランシュ (中央区/ 加納町)
神戸市の玄関口として、シンボルの花時計と並んで親しまれる「東遊園地」。市民の憩いの場であり、阪神・淡路大震災のモニュメントやルミナリエの会 場としても知られる東遊園地ですが、異人館にゆかりのある公園だったことはあまり知られていません。特集の最後に、東遊園地の意外な歴史と異人館のつなが りをたどってみました。
居留地のレクリエーション・グラウンド、東遊園地の歴史


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開港より多くの海外貿易商が訪れていた神戸には、明治元年~明治32年まで 『外国人居留地』と呼ばれる区画がありました。その神戸居留地の東に、スポーツを楽しむレクリエーション・グラウンドとして開かれたのが 『東遊園地』 です。
当時は 『内外人公園』 と呼ばれ、外国人も日本人も利用することができました。グラウンドは緑の芝生で整備され、ラグビー・サッカー・クリケット・テニスなど数々の競技が行われた“洋式スポーツのメッカ”だったのです。
そんな東遊園地の中に、当時の人々の交流に欠かせない場所がありました。外国人たちの社交場として親しまれた 『神戸クラブ』 と、総合スポーツクラブ 『神戸レガッタ・アンド・アスレティック・クラブ』です。
現在も東遊園地の南にたたずむレンガ造りの建物は、この2つのクラブハウスを再現したもの。初代の建物は神戸大空襲で失われましたが、再建されたレンガの建物に当時の面影が生きています。
【写真】 [上]東遊園地の一角には、居留地にゆかりのある外国人の記念碑があります。
[下]平成3年に再建された『神戸クラブ』。もう一方の建物は、公園の管理事務所になっています。
■ 公園の緑に包まれた「隠れ家」

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こちらは、「神戸クラブ」の建物を利用したレストラン『ヴィラブランシュ』 。東遊園地の水と緑に囲まれたお店は、神戸の旧居留地でウェディングができるカフェ・レストランとして親しまれています。
オリジナルの建物が建造されたのは、明治23年(1890年)。神戸に数々の異人館を残したA・N・ハンセルによって設計されました。『神戸クラ ブ』 はハンセルが手がけた建造物の中でも傑作とされ、“東洋で最も美しい”と言われた神戸居留地でも珍しい造りだったようです。再建された建物にも美しいレン ガ造りの外観が生かされ、アーチ型の窓枠、入り口の白いひさしなどに当時の特徴がうかがえます。
【写真】レンガ造りの外観が魅力の『ヴィラブランシュ』。当時の写真と見比べると、特徴が生きているのがわかります。
歴史と溶け合った、くつろぎの場所


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『ヴィラブランシュ』 は一階がテラス付きのレストラン、二階はブライダルでの利用や団体での宴会も可能なスペースで、高い天井と開放的な窓に異人館らしさを感じます。
店内は建物の雰囲気を生かして改装されましたが、トレードマークであるレンガ造りの外観は大切に守られてきました。小さな一軒家を思わせる赤レンガの建物は「かわいらしい !」とお客さまにも人気。林にたたずむ隠れ家的な雰囲気に惹かれ、このお店をウェディング会場に選ぶ方も多いそうです。
神戸の中心地にありながら緑に囲まれた建物には、都会の喧騒を忘れさせる安らぎがあります。カフェ・レストランで食事をしたあと、公園の木陰でくつ ろいで帰られるお客さまも。そこはかつて芝生に覆われたグラウンドであり、居留地の外国人にとっても憩いの場でした。そんな歴史が街の暮らしに溶け込んで いるところが、神戸の奥深さなのかもしれません。
【写真】[上]ヴィラブランシュのチャペル。窓の外に緑と自然光があふれています。
【写真】[下]一階のテラス。奥に見える入り口の三角屋根に『神戸クラブ』の面影が。
| 公式HP | http://www.villablanche.net/ |
|---|---|
| 所在地 | 神戸市中央区加納町 6-4-1 東遊園地内 |
| 営業時間 | LUNCH/11:30~14:00 (ラストオーダー) DINNER/17:30~20:00 (ラストオーダー) |
| 休業日 | 火曜日 |
| お問い合わせ先 | TEL:078-332-7888 |



























