
大人の男には、いろいろな顔がある。残業といいつつ、時々立ち寄る隠れ家のバー。あの喫茶店ではタバコを吸う…。そんな男たちが足を向ける店には、世代を超えて味わえる魅力がある。今月は、大人が楽しむ「旧きよき神戸」の店舗を紹介します。
あの頃の喫茶店、今は大人のくつろぎで楽しむ
「三ノ宮」駅からほどない高架下、酒房の並ぶ細道にたたずむジャズ喫茶 『JAVA(ジャヴァ)』。戦後のジャズをいち早く神戸に届けたこの店は、半世紀以上前とほとんど変わらぬ昔のまま、今も同じ場所で愛され続けている。
戦後の青春世代は、ここで「新しい音楽ジャズ」に出合った。
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『JAVA』の創業は昭和28年。進駐軍による占領も終わりを迎え、欧米文化が次々と日本に広まっていた頃である。JAVAは当時の神戸では数少ない米国の音楽、ジャズを楽しめる空間だった。その当時めずらしかったコーヒーという飲み物、その一杯のコーヒーを楽しむため、近くの質屋で小物を売っては立ち寄るお客もいたという。
JAVAを訪れた若者の多くが、この店で初めて「ジャズ」という音楽を知った。1940~50年代は、戦中流行したスウィングに代わる様々なジャズ・ジャンルが生まれた時代でもある。まったく新しい音楽との出合いは、JAVAを訪れた人々に鮮烈な衝撃を与えたに違いない。
お客さまの中には「10代の頃から、ここでジャズを聞いている」という常連客もいるという。オリジナルのサイフォン・コーヒーを飲みつつ心地よいビートに浸っていると、ジャズに心躍らせた若者たちの面影が浮かんでくるようだ。ゆったりとくつろぎ「昔を懐かしむ」ことは、思いを馳せるだけ人生を重ねた大人の特権かもしれない。
【写真】[上]「茶房 ジャヴァ」の看板は、震災で失われたものを創業当時のままに復刻した / [下]初代オーナーが米国から船で取り寄せたオーディオ機器。希少な年代物のため、メンテナンスができる整備の職人も限られている
旧きよき思い出をたどり、人々はこの場所を訪れる。

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時は流れ、特に震災以降は神戸を離れていった常連客も少なくない。だが人々の想いはめぐり、懐かしい思い出の場所へと足を向けさせる。
何十年もの時を経て、日本を離れ遠い永住先の海外からJAVAを訪ねてきた人もいる。昔と変わらぬ看板を見つけたとき、そして当時の学生仲間とJAVA で再び再会したときの感動は、いかほどであっただろう。
当時江利チエミも歌っていた進駐軍のキャンプで製菓係をしていた、という常連客がもってくる「かなり酒の効いた手作りの特製ブランデーケーキ」 - その米軍も味わったケーキは、その当時のアメリカの香りがした。だが、いつの頃からか姿を見なくなった。後に亡くなったことを聞いたのは、父の愛した店に足を運んでくれた娘さんからだった。
半世紀余の、JAVAにまつわる人間模様。そのひとつひとつに映画のようなドラマがある。この店で感じる味わいには、雰囲気だけでは語れない、旧きよき時代への思慕とロマンが詰まっている。
【写真】[上]店内は落ち着いた照明。椅子やテーブルは、永田良介商店によるオーダーメイドだ / [下]今は店内のジャズはCDがメインだが、やはりレコードの音は格別で、今でも現役である

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ジャズといえば愛好家がターゲットの店も多いが、JAVAを訪れる客層は実に幅広い。それは「もっと多くの人にジャズを聞いて楽しんでもらいたい」という、創業当時の気風が生き続けているからだ。
もちろん、店の奥で静かにジャズを楽しむ人もいる。お茶を飲みながら、話に花を咲かせる人もいる…こうして平成のJAVAを楽しむ人々も、いつかは今をしのぶ世代となるのだろう。そしてまた思い出をたどり、この店を訪れるのかもしれない。
【写真】ゆったりと音楽の聴ける広い空間がある。江利チエミや、若き日の大橋巨泉もここJAVAでジャズを楽しんだ
| 公式HP | http://www.equiv.net/_10_ks/ks003.html (『神戸の情報サイト equiv』 店舗紹介) |
|---|---|
| 所在地 | 神戸市中央区北長狭通1丁目31‐13 |
| 営業時間 | 11:30~21:30 |
| 休業日 | 木曜不定休 |
| お問い合わせ先 | TEL:078-331-1019 |
『ちょっと一杯』 も味にこだわる、それが大人
新開地駅を地上に出ると、目に飛び込んでくる「酒房」の看板。『高田屋京店』は、試行錯誤の末に築き上げた「おでん」の味を、この場所で40年以上も守っている。
叩き上げで編み出した「おでん」の味、今はもう40年以上

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『高田屋京店』の創業は昭和6年。金杯酒造の蔵元で番頭をしていた先代が、金杯を看板酒とする「高田屋」からのれん分けして店を開いたのが始まりである。
当時の新開地は「東の浅草、西の新開地」と呼ばれるほどの繁華街だった。映画館や芝居小屋が立ち並び、買い物や遊興に訪れる人々でにぎわったという。今の場所に店を構えたのは戦後、現在の当主である二代目になってからだ。だが二代目が店を受け継いだとき、名物である「おでん」の味は一度失われてしまった。二代目は「高田屋のおでん」の味加減を知るために、同じくのれん分けをした兄貴分の店に通いつめたという。
「配分を教えてくれ」と聞くこともせず、だしの味を確かめては店に戻って四苦八苦する日々が続いた。ようやく納得のいく味を見いだしたのは、現在も京店を守るおかみと試行錯誤を重ねた結果である。今の高田屋京店で味わえる「おでん」の味は、そんな叩き上げの日々と伝統の融合なのだ。
【写真】[上]昼前から煌々と灯る「高田屋」の看板 /[下]店内に飾られた創業当時の写真。初代の店は、今はなき「神戸三越」の近辺にあった
必要以上に語らない、寡黙な味が酒にはいい。

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毎日継ぎ足される高田屋京店のだしは、日々煮込まれた具材の味が生きている。仕込みが始まるのは朝8時。当主がだしを丹念にこし、おかみたち女性陣は具材の牛すじやロールキャベツの用意に手間ひまをかける。火加減ひとつで味が変るという「おでん」の仕込みは、昼の2時ごろまで続く。
醤油を使わず、かつおと砂糖、塩等で味を整えた だしは、口に含むとほのかな甘みが広がる。染み込んだ風味はあっさりして、具材以上には味を主張をしない。塩辛いばかりのアテが増える中、高田屋京店のおでんは、長年愛されてきた"寡黙なうまみ"を秘めている。
この素朴な味加減が酒には丁度いい。昼から一杯を楽しむ大人の背中には、そんな気どらない味が何とも似合うのだ。
【写真】[上]おでんのロールキャベツ、ごぼ天、こんにゃく、牛すじ / [下]店内は昼前から、「ちょっと一杯」を楽しむ客でにぎわっている

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高田屋京店は、時代とともに新開地の町を見守ってきた。大手重工が割拠していた頃は、福原へ向かう会社帰りの人々で店がにぎわったという。
今では新開地界隈もすっかり姿を変え、店を訪れる客層も幅広くなった。だが当時を懐かしみ、ひょっこりのれんをくぐるかつての常連客もいる。
物価上昇のあおりを受け、おでんの値にも影響が出た。だが「何とか食べていければ」と微笑むおかみの表情には、この場所で守り続けてきた看板への愛情と誇りがにじみ出ている。
【写真】20種を越える高田屋京店のおでん。手間ひまをかけた仕込みは「子育てと同じ」という。
| 公式HP | http://www.shinkaichi.or.jp/shop/shop02.html (『新開地ファン』店舗紹介) |
|---|---|
| 所在地 | 兵庫県神戸市兵庫区湊町4-2-13 |
| 営業時間 | 11:00~21:30 |
| 休業日 | 日曜日/祝日 |
| お問い合わせ先 | TEL:078-575-6654 |
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